編集者(育成会長)のひとこと   長 八洲翁





スカウティングのこころ


 「われはふくろ 楽しきふくろ・・」この歌は吉川哲雄という方が作詞された「懐かしの森へ」というスカウトソングです。キャンプファイアなどでよく歌われていますが、この歌を富士のふもとにいるふくろうの歌だと思っているスカウト達が多いと思いますが、この歌の中には作者のスカウティングに対する情熱が込められています。昭和2年に中央実修所が山中野営場で開設されたときのことです。作者は実修所の所員として一日前に東京から実修所の装備をトラックに満載し、やっとのことで山中野営場にたどり着きました。あたりは暗く、星も輝きはじめていました。トラックの荷物を下ろし、懐かしい山中野営場、過去に自分がキャンプした跡へ帰ってきました。これが「わがふるすへ帰らなん」です。実修所先発者として早速テントを張り、その中へ資材を格納して、次に今夜自分の寝るテントを張り終えたとき「つとめ果たし、心さやか」の心境になります。心身ともに疲れ果て、わが古巣のテントに倒れこんだ時の心境が「ああ 富士の麓山中の森かげに」で表現されています。実にそのときの情景と作者の心がよく伝わってきます。スカウトソングの歌詞をかみしめてみますと、歌の中にはスカウティングの楽しさ、喜び、心意気、友情、思いやりの心、感謝の心など、いろいろなスカウティングの心というものが表現されています。  最近、スカウトが歌を歌わなくなったということをよく耳にしますが、指導者のみなさまにはスカウト達にできるだけ多くのスカウトソングを指導していただきたいと思いますし、また、夜話の中でも歌の意味をスカウト達にお話ししてあげていただきたいと思います。



音なき交響楽


スカウティングは大人と子供の友情ゲームであると言った人がいました。指導者とスカウトの友情、指導者同士の仲間意識とチームワーク、そして心のふれあいと感謝の心。スカウティングの発展はこれが一番大切だと私は常々思っております。
ところで、先日、ある高等学校の吹奏楽部が主催するコンサートに行く機会がありました。海外へも遠征し、毎年全国のコンクールで金賞を受賞している学校です。昨年の御堂筋パレードでは雨の降る中、阪神タイガースの六甲おろしを演奏していたのをテレビで見られた方も多いと思います。大きなフェスティバルホールの会場は超満員の観客で埋め尽くされておりました。幕が開き、その一糸乱れぬ演奏と一生懸命に頑張っている純真な生徒の姿には大変感動し、そしてさわやかな気持ちになりました。演奏を聴きながら私は昔読んだ随筆集のことを思い出しました。それは第4代日本連盟総長三島通陽先生の「音なき交響楽」という随筆集です。三島総長はこの中で「スカウティングは大勢の人々の交響楽のような心持ちでやりたいものだ」と述べられておりました。 団の中でも地区の組織の中でも一人ひとりを大切にし、思いやりの心を持ち、音なき交響楽が一つのハーモニーとなればスカウティングはもっと自然に発展していくのではないでしょうか。常に指導者として心がけたいものだと思います。



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